急ぎ足で坂を登ると目の前に大きな屋敷の姿が現れた

「着いた〜」

もし、この世界が月姫の三咲町ならば話しに出てくる登場人物がどこかしらにいると考えた

しかしこの町の中から探すのも困難だと思いならば登場人物の住んでいる家を探せばいい

「本当にあるとは…だけど本当にでかい屋敷だな」

丘の上にある屋敷、そこに遠野 志貴 つまり月姫の主人公が住んでることは知っていた

遠野の屋敷、それだけ言えばほとんどの人間は簡単に場所を教えてくれた丘の上にあるため目では見えても歩くには一苦労した

「これで月姫の三咲町にいるってことは分かったか」

門の鉄格子のむこうに見える屋敷を眺めなら俺はやっと自分のいる場所が分かった

だが本当にこれは夢で俺は長い夢を見ているということになるのだろうか?

それとも本当に月姫の世界に入り俺は1人のエキストラになってしまったのか?

(だめだ…場所は分かってもかんじんな事が分かっていない)

俺はこの場を離れ歩いた道に戻ろうとした時だった

「なにか御用ですか?」

後ろから聞こえた少女の声に俺は首だけを向けるとそのまま銅像のように固まってしまった

「あっ、え〜と…」

返す言葉がなかった、この場所が月姫に出てくる町だとは分かっていたが

「あの、どうされました?」

両手にビニール袋を持ち頭に青いリボンで髪を結び着物を着た少女が笑顔で顔を覗きこんだ

「もしかして志貴さま…ですか?」

少女は答えが分かったかのように笑顔で聞いてきた

「いえ、俺は遠野 志貴ではないです」

「ですよね、明日来るはずなのに今日来るのはおかしいですよね」

ははは、と微笑んでいると俺と彼女の横に1台のリムジンが停まった

「お帰りなさいませ秋葉さま」

頭をふかぶかと下げると後部座席から1人の少女が現れた

「ただいま琥珀…そちらは?」

「こちらは…えーと、あのお名前はなんでしたっけ?」

2人の女性から見られ、いやリムジンの横にいるセーラー服を着た少女は少し睨んでるように見えるが

(これは答えないとだめだよな)

です」

「これもなにかの縁です、さんどうぞ屋敷に寄っていただけませんか?」

セーラー服の少女はかすかに微笑みながら俺に聞いてきた

「いや、そんな俺は」

「まぁまぁ、いいじゃないですか。秋葉さまが初対面の方をお誘いするのはめったにないんですよ」

断る俺を後ろから着物姿の少女が俺の背中を半ば強引に屋敷の中にぐいぐい押していた

「わ、分かりました。それじゃあ」

断る事も出来たはずだったがそこまで言われると断れなくなってしまった

「さぁ、どうぞ」

着物姿の彼女が門を開け先頭にはセーラー服の少女がそして俺の後ろには着物姿の少女がビニール袋を持って歩いていた

(緊張するな…別に悪いことをしているわけじゃないのに)

歩くにつれて段々大きくなってくる屋敷を眺めながら俺はこれから先、自分がどうなるか予測不能なことを思い不安を感じていた

だが彼女達に会ったということはここは月姫の世界だ…そう

月姫の主人公の遠野 志貴の妹の遠野 秋葉

その主人公達の住む屋敷の手伝いの琥珀

この2人がこの世界にいるということはここは完全に月姫の世界だってことだ



「うわぁ…でか」

屋敷に入るなり始めに出た言葉がそれだった

上には豪華そうなシャンデリアが飾られ手前には2階に行くための階段があった

「そちらのソファーの方でお待ちしていてください」

琥珀は居間にあるソファーに案内すると荷物を持ってどこかに消えていった

(なんだか落ち着かないな)

俺は周りにある絵画やら壺など高価そうな物を見ていると今さっき来た場所から遠野 秋葉現れた

「お待たせしました」

「いえ、そんなに待ってませんでしたよ」

頭を少しさげる遠野 秋葉に俺も慌てて頭をさげていた

「紅茶をお持ちしました」

琥珀がいつの間にか割烹着も着て紅茶を目の前のテーブルに置いた

「ありがとうございます」

彼女におわびの言葉を言うとカップに入った紅茶を一口口にいれた

「それでさん、どういった御用でこの屋敷に訪れたのですか」

遠野 秋葉が真剣な目つきで俺を見て話してるのでカップを元の位置に戻そうとした時だった

「秋葉さま、さんは志貴さまのお知り合いの方だと思いますよ」

後ろのほうで俺達の話を聞いていた琥珀が話を続けた

「私が買い物で外の門に着いた時さんが立っていたので志貴さまですか?と聞いたら「遠野 志貴じゃないです」と答えました」

琥珀の話を目を閉じ遠野 秋葉はカップの紅茶をすすりながら話しを聞いていた

「それにさんは学校の制服を着ていますし志貴さまのクラスメイ…」

「クラスメイトではないわ琥珀」

最後まで話を聞かずに遠野 秋葉が俺を見ながら話し始めた

「彼の制服はこの町の高校では見たことのない制服、兄さんのクラスメイトではないわ」

「それではなぜさんは志貴さまのことをご存知なんですか?」

遠野 秋葉に向けていた顔をいつのまにか俺に向けた琥珀

「さぁ、それはさんに聞かなければ分からないわ」

飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置いた。置いたと同時に今までとはどこか違う重い空気を遠野 秋葉はつくっていた

「…始めから知っていたんですか?」

琥珀はともかく遠野 秋葉はもしかすると俺が普通の人間ではないとどこかしらで気づいていたのかもしれない

「車から降りたときに気づきました、あなたはどこか他の人とは違う気配を感じました」

「…」

正直まいった。ようするに彼女、遠野 秋葉は俺と目を合わせたときから気づいていたのだ

心身的にはどこもおかしくないごく普通の俺を彼女は

「答えていただけますか、さん?」

さらに強い口調で俺に話しかける遠野 秋葉

さてどうしよう、彼女に本当のことを話すべきか…それとも





A:「分かりました」と本当のことを言う



B:ダメだ、何となくだが言ってはいけない気がする